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金沢地方裁判所 昭和35年(わ)58号 判決 1965年4月19日

被告人 小林勉

昭七・六・二九生 郵政事務官

主文

被告人は無罪。

理由

第一、本件公訴事実

本件公訴事実は「被告人は金沢郵便局郵便課事務員で、全逓信労働組合石川県地区本部青年部長であるところ、全逓信労働組合が昭和三四年年末斗争に企図した、差立締切郵袋の標準重量厳守等のいわゆる規制斗争に際し、谷浦政一、宇野正五郎と共謀の上、昭和三四年一二月一九日午前九時二〇分頃、金沢市博労町一三番地金沢郵便局郵便課作業室で、何等正当な職務権限がないのに、同所小包郵便区分棚附近に差立のため集積してあつた、小包郵便差立締切郵袋の重量を計量した上、その中、同日午前九時三四分頃同局発羽咋郵便局外一局宛差立予定のもの九個、同日午前一一時一四分頃同局発小松郵便局外一局宛差立予定のもの二個、合計一一個の郵便専用物件である差立締切郵袋より、それぞれ、その郵袋票札差しに差し入れてあつた差立局名、宛局名等を記載した文書である一一枚の票札を抜き取つた上隠匿して、前記差立予定便に差立を不能ならしめ、以て、郵便の障害となる行為を為すと共に郵便局の用に供する文書を毀棄したものである」というのである。

第二、認定事実

よつて審案するに、桜井佳夫の検察官に対する供述調書、第二〇回公判調書中被告人の供述記載、同第一九回及び第二〇回公判調書中証人吉川徳治の供述記載、同第六回公判調書中証人中村清義の供述記載等を綜合すれば、(イ)被告人が昭和三四年一二月一九日現在、金沢郵便局郵便課の事務員であり、また全逓信労働組合石川県地区本部青年部長であつたこと、(ロ)被告人が同日午前九時一〇分頃金沢市博労町一三番地金沢郵便局郵便課作業室に、谷浦政一、宇野正五郎等と共に入つて行き、同所小包郵便区分棚附近に差立のため集積してあつた小包郵便差立締切郵袋の重量を、午前九時二〇分頃迄の間に計量した上、同局発羽咋郵便局外一局宛のもの九個、同局発小松郵便局外一局宛のもの二個、合計一一個の締切郵袋より、それそれ各郵袋票札差しに差し入れてあつた一一枚の票札(差立局名、宛局名、差立番号等を記載し、取扱担務者の認印を押捺してある名刺大、長方形の紙片)を抜取り、これを自己の着衣のポケツト内に入れたこと、(ハ)これ等の郵袋は、同日午前一〇時半頃より郵政監察局の職員等によつて、これに対する調査が行われた後、同日午後同局より各宛局に向けて発送されたが、被告人によつて抜取られた票札は遂にその使用を見るに至らなかつたこと、(ニ)谷浦、宇野は計量を手伝つたに止まり、票札には手を触れなかつたこと等の諸事実をそれぞれ肯認することが出来る。右認定を覆すに足る資料は存在しない。叙上の認定事実は、本件公訴の実体を構成する基本的事実であるが、叙上に認定した事実のみによつては、いまだもつて被告人の前記の所為が、果して法的に如何に評価され、如何なる効果を附与せらるべきものであるかを判定するを得ない。よつて、被告人の所為に対する法的評価に必要な諸点を明かにするため、(一)被告人が票札を抜取つた郵袋は具体的にどのようなものであつたか。(二)該郵袋の締切方法は郵便法規と適合するものであつたかどうか。(三)若し適合しないとすれば本件郵袋のような締切方法によつて郵袋を締切ることを是認する慣行が金沢郵便局に存在したかどうか。(四)被告人は、如何なる動機から、如何なる結果を発生せしめる目的で、そのような行為をしたか、(五)被告人はこのような行為をするについて、正当の権限を有していたかどうか等の諸点についてさらに検討することとする。

一、本件郵袋

第二一回公判調書中証人村中民夫の供述記載、第一一回公判調書中証人米谷初平の供述記載、第一二回公判調書中証人片山雅夫の供述記載等によれば、被告人の所為の対象となつた郵袋はその数一一個であつて、その宛局名、重量、及び使用郵袋を一覧表に掲げると左のとおりであり、

宛局名

重量

使用郵袋

羽咋局

一七、五瓩

並郵袋

一六、五瓩

錠郵袋

一七、〇瓩

錠郵袋

一七、〇瓩

並郵袋

一九、〇瓩

並郵袋

二八、〇瓩

錠郵袋

七尾局

二七、五瓩

錠郵袋

一四、〇瓩

錠郵袋

二四、〇瓩

錠郵袋

小松局

二五、〇瓩

錠郵袋

神戸分局

一七、〇瓩

並郵袋

いずれも大郵袋と称せられる大形の郵袋であつて、集配局である金沢郵便局より鉄道郵便局を経て、宛局にそれぞれ送付されるものであつたことが認められる。この点についても右認定と牴触する資料は存在しない。

二、前記郵袋の締切方法と郵便法規

ところで集配郵便局取扱規程内務編(昭和三三年二月一八日公達第一三号)第三章運送、第九表、郵便物の納入方通則を検討すれば(1)郵袋はその封緘方法の如何により、並郵袋と錠郵袋との二種にこれを区別することが出来、並郵袋はその中に通常郵便物や小包を格納してから、その口を緊縛した上、封鉛と称せられる鉛製の材料で、その口に封緘を施すことに依り、その開披を防止するものであるのに対し、錠郵袋はその口を緊縛した後、これに施錠することによつてその開披を防止するものであつて、前者は宛局に到達し開披される迄、何人もこれを開披することが出来ず、取扱上比較的に厳重なものとされ、従つて集配局間の輸送等、比較的に長距離の輸送に使用すべきものとされているに反し、後者は、各郵便局備付の合鍵を使用すれば、何人であつても、また何時でも、これを容易に開披し得るのみならず、再び施錠することにより開披の痕跡を残さなくなるものであつて、取扱上は比較的に簡略なものとされ、集配局と無集配局間の輸送等、比較的に短距離の輸送に使用すべきものとされていること、(2)郵袋は、その大きさにより、大郵袋とその他の郵袋とにこれを区別することが出来、大郵袋の重量は一五キロを標準として締切るべきものとされていることなどを各看取し得る。次に、本件郵袋が叙上法規の趣旨に従つて締切られていたかどうかを考察すると、既に説示したとおり本件郵袋はその全部が集配局間の輸送に使用される予定のものであつたから、いずれも並郵袋を使用すべきであつて、錠郵袋を使用すべきでなく、また、その全部が大郵袋であつたから、いずれもその重量は一五キロを標準として締切られるべきであつたことが明白である。もつとも右の法規は郵便業務の正確且能率的な運営を目指して、その理想的な取扱手続を規定したものに外ならず一種の訓示的規定に過ぎないから、業務多忙の時期にあつては、必ずしもこれに従うを要しないとする見解も存在しない訳でなく、また、郵袋の標準重量については、法規の文言それ自体より明かであるように、郵袋の最大重量を規制したものと解すべきではないこと勿論である。しかしながら叙上取扱規程の立案者が如何なる目的でその起草をしたかはさておき、郵袋の使用区分に関する規定は、事故発生に際しその責任の所在を明かにし、輸送に当つた従業員を不必要な犯則の嫌疑から防衛する機能を営むし、また郵袋の重量制限に関する規定は、従業員を過重な労働から救済する作用を果すことが明かである。この故に前示の郵便法規は、郵便事業に従事する職員にとつては、労働の条件を規整する一種の就労規則であるとして、観察することも可能である。前掲集配郵便局取扱規程内務篇に、天災、地変、滞貨の激増等特別な状況が発生した場合であつても、郵便局長は地方郵政局長の許可を受けなければ、みだりに該規程に牴触するような取扱をすることが出来ない旨の規定が存在するのは、おそらくこれがためであろう。これ等の諸点を考慮に入れるとき、前示の郵便法規は決して単なる訓示規程と見るべきでなく、郵袋の使用区分の厳守を命じ、標準重量を著しく超過した郵袋の締切を禁止し、若しこれに違背する郵袋があつた場合には、担務員に対しその是正を命ずるものと解釈すべきである。そうだとすれば、これ等の法規は、本件郵袋中、郵袋の使用区分を誤つた七個、及び郵袋の使用区分に誤りはないが、標準重量を著しく超過すると認められる一個、合計八個については、当該担務者に対し、法に適合するように、その締切り直しを命ずるものと解すべきである。なお、郵袋の使用区分に誤りがなく、標準重量を二キロ乃至二、五キロ超過するに過ぎない三個の郵袋については、前掲の郵便法規は当該担務者に対し、その締切り直しを命ずるものではないが、当該担務者が郵袋発送の事務に支障のない限り、郵袋の重量を標準重量に適合させようとして、その締切りを仕直すことを敢てとがめるものでないこともまた明かである。そうだとすれば、本件郵袋の大部分は法規に適合しないものであつて、担務員によつて、その締切りを仕直されるのが当然のものであり、残余のものについても、郵袋発送の事務に支障のない限度で行われる限り、担務員がその締切りの仕直しをすることは、法の放任するところであつたと言わざるを得ない。

三、金沢郵便局の慣行

法規の趣旨は叙上のとおりであるが、往々にして法の規定と異る取扱慣行が郵便局に成立し、恰も慣行が法規に優先するものの如き観を呈する場合がある。法規を順守していては多量の郵便物を限られた人員で処理することが不可能な場合等に往々成立することがあり、臨時応急の措置として、実務上是認されるものである。本件の場合そのような何等かの慣行があつたか否かについて検討する必要がある。よつてその点についてさらに審究するに、証拠を精査しても、金沢郵便局においては、本件発生の当時、並郵袋を使用すべき場合に錠郵袋を使用したり、錠郵袋を使用すべき場合に並郵袋を使用したりすることを是認、または看過するような慣行があつたことを肯定するに足る何等の資料が見当らない。もつとも第一一回公判調書中証人美多与市の供述記載によれば、郵袋は一定の表識を附した上、並郵袋を錠郵袋に代用し、又は錠袋に封鉛を施して、これを並郵袋に代用する場合があることを認め得るが、本件の場合はそのような法の許容する手続を履践して居らず、右に述べたような場合には該当しない。次に郵袋の重量に関しては、標準重量を少々超過するに過ぎないようなものは別とし、年末等の繁忙時に、臨時の作業員によつて標準重量を著しく超過した郵袋が締切られたりしたこともあつて、そのような場合には鉄道郵便局その他各方面から苦情の申入があつたりしたことは、第一七回公判調書中証人角谷勝敏の供述記載によつてこれを認め得べく当局においても平素よりそのような郵袋を作らないよう、従業員を指導していたことは第一一回公判調書中証人中沢早苗の供述記載、第七回公判調書中証人武内金吾の供述記載等によりこれを認め得べく、右の事実よりすれば、金沢郵便局においては、法の定めた標準重量を著しく超過する郵袋が発見された場合、これを看過した例はあつたとしても、少くともそのような郵袋の締切りを是認する慣行は、存在しなかつたものと認むべきである。

四、本件所為の動機及びこれより生じた結果に対する被告人の認識の程度

被告人の行為は全逓信労働組合の昭和三四年度年末斗争に際し、いわゆる順法斗争の一環として、同組合中央本部の指令に基き、当該担務員として法規に適合しない郵袋を是正させ、ややもすれば滞貨の迅速な処理に意を注ぐあまり、臨時の作業員等の手に依り、往々郵便法規の趣旨と適合しない郵袋が出来ても、これを是正することなく、そのままその輸送をなさしめている当局の業務遂行方法に対し抗議し、且つ抵抗するために為されたものであつた、すなわち法規に適合しないと考えられる郵袋から標札を除去することにより、当該担務員をして、その締切りの仕直しをさせようとするものであつた、右の事実は第二〇回及び第二三回公判調書中被告人の供述記載によつて明かである。しかしながら他方において、前掲被告人の供述記載、第一〇回公判調書中証人生駒終吉、第七回公判調書中証人豊岡豊、第一九回及び第二〇回公判調書中証人吉川徳治、第六回公判調書中証人桜井佳夫の各供述記載、検察官に対する桜井佳夫の供述調書及び当裁判所の昭和三九年八月二〇日施行した検証調書の記載等を綜合すれば、(1)被告人は、郵袋の計量をし、重量の超過している郵袋から票札を抜取つたが、差立時刻の迫つた郵袋については、たとえ重量が超過していても、一旦抜取つた票札を再び票札差しに差し込んで、その発送をなさしめていたこと、(2)被告人は、担務員が直ちに締切り直した郵袋については、票札をその場で原状に復し、その発送をなさしめていたこと、(3)被告人が本件一一個の郵袋からその票札を抜取つたのは午前九時一〇分頃から二〇分頃迄の間であつて、従つて、当時の担務員吉川徳治、桜井佳夫等が協力して、直ちにその締切りの仕直しをすれば、(一個の郵袋から重量超過分に相当する小包を取出し、送達証を訂正して、郵袋の締切りを仕直し、封鉛を施すのに、一分三〇秒位の時間を要する)差立予定時刻であつた午前九時三四分頃及び午前一一時一四分頃迄には、前記の郵袋の全部は、支障なくその全部の発送を完了することが出来たものであつたこと。(4)被告人は票札を抜取つた直後、相当に急いだ態度で、金沢郵便局郵便課の生駒副課長に対し、法規に適合しない郵袋の締切りの仕直しをするように要請したこと、(5)同副課長は上司と協議の上善処する旨回答したのみで、結局何等の指示をも与えなかつたこと、(6)担務員吉川徳治、桜井佳夫等は、当該郵袋の大部分が、当局側職員(同局次長豊岡豊)によつて締切られた郵袋であつたため、自分等の手でその締切りの仕直しをすることを躊躇したこと、(7)午前一〇時半頃に至り、当局側の調査が開始され、本件各郵袋は午後迄その発送を抑留され、被告人がその責めを問われるに至つたこと等の諸事実を肯認し得べく、これ等の諸点の外、なお抜取つた票札の数の僅少であつたこと等諸般の事情を併せて考慮すれば、被告人の意図は、いわゆる順法斗争の一環としては、比較的に微温的なものであり、差立予定時刻における郵袋の発送を、不可能ならしめるような事態の発生を予期していたものではなく、寧ろ、そのような事態の発生しない限度における組合本部の指令の部分的実施を、考えていたものと看ることが出来ないわけでない。これを要するに、以上述べたところによれば、被告人の本件所為の動機が、組合指令の実施にあつたことは、まことに明かではあるが、しかしながら、それだからと言つて、被告人に、郵袋発送の業務に支障を与えようとする故意(未必的故意をも含む)があつたものとは、にわかに断定し難いと言わねばならぬ。

五、被告人の職務権限

たとえ郵便法規と適合しない締切方法による郵袋であつても、何等正当の権限を有しない者が、みだりに該郵袋の票札を抜き取つて、これを廃棄するような行為に及んだ場合、該行為の動機如何はさておき、右の所為が、刑法或はその他の法規に違反する行為として、非難し、処罰されるのは、或は当然かも知れない。しかしながら郵便局の当該担務員が法規に適合しない郵袋を発見した場合、その締切りの仕直しをする目的で、該手続の第一段階として、当該郵袋の票札を抜取り、これを着衣のポケットに入れたとしても、該所為を目して、直ちに郵便用具の損壊、又は公用文書の毀棄となすを得ないことは敢て説示するまでもないところである。ところで第二三回公判調書中被告人の供述記載、第八回公判調書中証人浜岡国松の供述記載等にこれを徴すれば、(1)被告人は金沢郵便課勤務の辞令を受けていた同郵便局事務員であつたこと、(2)同課内には普通通常係、小包係等があつて、その課内の事務の担当は同課長において服務表により毎日各課員の担務を具体的に指定していたこと、(3)被告人は本件事件当日は普通通常係として指定せられていたが、担務簿にはなお小包係として記載されたままになつて居たこと、(4)金沢郵便局においては郵便課員の担務は固定したものでは無く流動的な性格を持つたものであり、課員は事務の繁閑に応じ、課内の各係の事務を適宜にとることが出来たものであつたことを認め得べく、これ等の点より観る時、被告人は本件発生当日小包係として服務の指定を受けていなかつたが、なお、郵便課員の一人として、小包の事務についても法規に適合しない郵袋の存在を発見した場合、これを是正すべき業務上の一応の権限を有していたものと見ることが出来ない訳ではない。そうだとすると、被告人は起訴状中に言うが如く、必ずしも何等正当の権限なくして、郵袋の票札をほしいままに抜き取つたものではないとの結論に到達せざるを得ない。

第三、結論

以上に判示したところを綜合すると、被告人の本件所為の客体となつた郵袋合計一一個のうち八個は、集配郵便局取扱規程内務編(昭和三三年二月一八日公達第一三号)の趣旨に適合しないものであつて、且つ金沢郵便局には、このような郵袋の締切を是認するような慣行も存在しなかつたことが明かであるから、従つてこれら郵袋については、差立予定時刻に間に合うと否とに拘りなく、担務員は発送前その締切の仕直しをするのが相当であると認められるし、被告人は、これ等の郵袋を是正するについて、郵便課員として、一応の職務権限を持つた担務員の一人であつたと認定することが出来る。また、その余の三個の郵袋は、法規の趣旨に適合する方法で締切られたものであるから、これを客観的に見れば、被告人の所為は、これ等適法な郵袋について、不必要な干渉を試みたものとして、事務能率上の非難は或は免れないかも知れないが、しかしながら、被告人が重量の是正をしようとした適法な郵袋の数量は、僅かに三個に過ぎず、しかも、被告人の所為は、その差立予定時刻迄にその締切り直しが可能な限度内において、担務員に対し、標準重量迄減量すべく、その是正方を要望したに過ぎず、しかもこのような行為に及ぶことにつき、検察官所論の如く、被告人は何等正当の職務権限を有していなかつたものではなく、その締切りを仕直すべき一応の職権職務を有していたとさえ解し得るから、同人の所為は法の許容する範囲内の行為であつたと認めざるを得ない。たとえ郵袋締切り権限を有する担務員であつても、僅少の重量超過を口実に、多数の郵袋より票札を抜き取つて、予定時刻におけるその発送を不可能ならしめる如きは名を順法に仮りて実は罷業をなすものとして、これに対する刑罰法規の適用を免れないものであることは言う迄もない。しかし被告人の場合はこのようなものでないこと、すでに説示したとおりである。そうだとすれは被告人の本件所為については、その犯意を肯定することが出来ないばかりでなく、その他の点においても起訴状記載の構成要件を完全に充足すると認定するを得ないので、結局、被告人に対する本件の公訴は、その証拠が十分でなく、犯罪の証明がないに帰着するから、その余の争点について判断する迄もなく、刑事訴訟法第三三六条後段により被告人に対し無罪の言渡しをなすべきものとする。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 沢田哲夫 河合長志 畠山芳治)

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